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【2021年度】東京都立大学の入試改革!首都大から名前が変わるだけじゃない!

*紹介している教材にはプロモーションを含みます

学習塾STRUX塾長の橋本です。

今回は来年度から大幅に入試も大学名も変わる「東京都立大学」についてお伝えします。

首都大学東京から名称変更。「東京都立大学」をピックアップ!

東京都立大学は、「首都大学東京」から2020年4月に「東京都立大学」という名称に回帰することが決まっています。

関東圏では非常に人気が高くなっている大学です。

入試改革によって大きく入試形式を2021年度から変更すると決まっているので、志望している方はしっかりおさえておきましょう

「高大接続改革・大学入学者選抜改革を汲み取っている」東京都立大

変更点は、以下の通り。

  • 前期試験の英語を「共通テスト」のみで判定(学部独自の試験を廃止)
  • 調査書を配点に含める

もともとはこれに「外部入試の点数も加味して、4技能をきちんと見る」というところがありました。もっとも、それは延期になってしまったのですが。

実際の文科省の高大接続改革のページでは

・調査書や志願者本人が記載する資料等の積極的な活用を促す。
・大学教育を受けるために必要な「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」を的確に評価するため、「大学入学共通テスト」の積極的な活用を図るとともに、個別大学における入学者選抜においても教科・科目に係るテストの出題科目の見直し・充実などに取り組む。
各大学は、受検生に英語の試験を課す場合、4技能を総合的に評価するよう努める。

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/11/06/1397731_03.pdfより抜粋

とあるように、入学者選抜の改善点にきちんと対応しています。多くの大学が調査書など「入学後の指導の参考にする」という程度で提出しか求めないのに対し、得点に盛り込む姿勢をとっている大学です。

その中でもきちんと大学の色を見せようとしています。共通テストの英語を使用しますが、配点比率は今まで通り4:1に調整したり、調査書の点数を取り入れはしますが10点とあくまでも試験の結果を重視する姿勢は変わりません。

ただ、今までの入試から変わることは明らかなので、きちんと確認をしておきましょう。

前期試験の英語を廃止し、「共通テスト」でのみ英語を見る

1つ目が英語の独自試験を廃止し、共通テストでのみ見るということです。

立教大学も同じ方針を取っていますが、大きく違うところは、やはり国公立大学なのでそもそも1段階選抜で共通テストの点数を要求している点と、リスニング・リーディングの配点を従来どおりに戻そうとしている点が挙げられるでしょう。

詳細は学部によって異なるので、こちらのページを参考にで確認しておきましょう。

法学部を例にすると以下のような配点です。

共通テスト個別試験
英語350点
(R280,L70)
英語なし
国語200点国語150点
地歴公民数学
200点
*1科目選択
地歴公民数学
150点
*1科目選択
調査書10点
750点310点

英語の能力は共通テストでしか判断されないため、必ず対策をしておく事が必要になります。基本的に共通テストのほうが点は伸びやすく、点数を安定させやすいため、なるべく高い点数が必要です。

共通テストは本来は「リーディング100点、リスニング100点」に変更され、これを採用する大学が多いようですが、東京都立大学ではどの学部も今まで通りの「リーディング4:リスニング1」の配点になると予定されているので、リスニングについても過剰に意識する必要はありません。さらに今まで個別試験で出されていた英作文等も必要がなくなるため、リーディングにしっかり絞って、素早く正確に情報処理をする必要が出てきます。

ここで「4技能を問うのに英作文がなくなるの? 」と疑問に感じる方もいると思います。

もとは「英語の外部試験」を利用する予定で入試の配点が決められる予定でしたが外部試験を使うから、独自で英語試験を実施する必要はない、ということで独自の英語試験が廃止されました。

しかし英語の外部試験の成績提供システムは使わないことになってしまいました。入試まで1年と数ヶ月しかない状態でいまさら個別試験の問題をつくるわけにも行かず、結局共通テストのみで対応することになっているというのが現状です。

ただ、2022年度入試以降は4技能に関わるテストが行われたり、個別試験が復活する可能性もありますので、ここは注意しておく必要があるでしょう。

「調査書」が配点に含まれる

調査書は推薦の人しか使わないのではないかと今までは思っていたかもしれませんが、入学者選抜改革ではこのような方針になっています。

筆記試験に加え、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」をより積極的に評価するため、調査書や志願者本人が記載する資料等の積極的な活用を促す。
各大学の入学者受入れの方針に基づき、調査書や志願者本人の記載する資料等をどのように活用するのかについて、各大学の募集要項等に明記することとする。

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/11/06/1397731_03.pdfより抜粋

ただ点数を取るだけではなく、その他のいろいろな活動も評価に加えるという方針になっています。

都立大は調査書も点数化して配点に加えています。詳細は募集要項が出るまでわかりませんが、法学部であれば10点ぶん(配点全体の1%以下)のみ評価される形です。

ただ学部によっては1500点中の50点(都市基盤学科)のように配点が大きいところもあります。正直ここで合否が分かれるということはまずありませんが、過度に気にする必要はありません。ですが意識しておきましょう。

なにか変わった対策が必要?

対策の仕方は「今までと変わらずきちんと取り組む」事が重要です。

そのためには普段の勉強はもちろん「どう出題されるか」の部分をぎりぎりまで情報収集しておく必要があります。今年は入試の傾向も細かい変更が予想されるので、特に今後も注視していきましょう。


今回は「首都大学東京」改め「東京都立大学」の入試変更について解説うしました。今後更に変更になるところも予想されるので、志望者は動向をしっかり確認していきましょう!

*記事に掲載中の学習塾STRUXプランは執筆時点でのものであり、一部変更となっている可能性がございます。詳しくは料金ページをご覧ください。

共通テストになって変わること「英語」「国語」編

センター試験から共通テストになることで、英語と国語はどう変わる?プレテストからわかること

*紹介している教材にはプロモーションを含みます

学習塾STRUX塾長の橋本です。

今回は、新2・3年生向けに「大学入学共通テスト」について詳しく触れていきたいと思います。

絶賛入試が揺れ動いている中で、共通テストの準備が着々と進められています。今回は過去数回実施されているプレテストを参照しながら、共通テストに向けてやるべきことについて話していきます。

センター試験VS共通テスト、どう違う?傾向と対策

さて、今回はその中でも「英語」「国語」について、「センター試験」と比較してどのように変わるのかを見ていきましょう。

なお、基本的にはすべて平成30年度試行調査をもとに分析しています。

総合

まずは全体像ですが、ここは大きくかわりません。

以前は「複数回実施にしてチャンスを増やす」なんてこともやろうとしていましたが、流石に導入できず現行通り1月中旬土日に実施することになりました。

記述式の導入についても挫折したので、特に変更はありません(記述式を導入しようとしていた名残で、数学の試験時間が一部変わっています)。

英語

おそらく一番大きく変わるのがこの「英語」の部分。英語については第1問から大きく問題形式が変わるほか、リスニングとの配点比率も大きく変わってくるので注意が必要です。

配点・問題構成

  • 筆記:200点→100点(リーディング)
  • リスニング:50点→100点

筆記が「リーディング」というふうに置き換わり、配点が半減します。名前が変わったとおり、いままであった文法問題や発音・アクセント問題はなくなってしまいました。

おそらく今までの長文問題を知っている人からすると、「長文は1問間違うだけで5点以上飛ぶからやだなあ……」という人もいたと思いますが、長文全体が100点満点、かつ大問数は6つですべて長文や票の読み取り問題になっているので、1問あたりの点数は1〜2点に落ち着くことになります。

ただ、その分リスニングの配点が上がっているので注意が必要です。リスニングはセンター試験であれば1問2点だったのが、問題数はあまり変わらず配点が倍になっているために1問あたり3点〜4点の配点になっています。

よりしっかりリスニングの対策をしておかないと、リスニングが得意な人と苦手な人で英語の点数に差が出やすくなることになります。

リーディングの細かい問題構成は、プレテストではこんな感じになっています。

センター(配点)共通(配点)
発音アクセント(14)掲示・Webサイトの読解(10)
文法(47)レシピ・記事の読解(20)
文削除、会話文など(33)ブログ・雑誌の読解(10)
図表読解など(40)記事(図表つき)読解(16)
小説・エッセイ読解(30)雑誌読解・ポスター作成(20)
評論読解(36)記事読解(24)

第5問だけは1問あたり5点も割り振られていますが、それ以外の大問は1〜3点ずつになっています。今まであった評論や図表の読み取りが減少しており、会話文に関しては削除されています(これは本当に謎なのですが)。評論を削ったのはそれをすべて「新聞記事」「雑誌記事」として扱っているからで、評論がないからと言ってその手の難しい文章がないかと言われるとそんなことないです。

共通テストプレテスト第1問

「ポスター問題」の例(大学入試センターHPより)

共通テストプレテスト第2問

「レシピ問題」の例(大学入試センターHPより)

ただ、いままでのように「評論がパラグラフごとにしっかり分けられていて、根拠が拾いやすい状態にしてある」ということがなくなったので、多少初見での難易度は上がっているでしょうか。最後には「記事に見出しをつけるとしたらどれか」という、私立大でよく見られるような問題が追加されています。

共通テストプレテスト第2問

形式が変わったぶん総じて実用を求めるスタイルになっています。これは英語に限った話ではないですが、「〇〇くんは学校の授業でディベートをすることになり、以下の記事を読みました」とか「以下の雑誌記事を参考にポスターを作ることになりました」とかいう注釈が入っています。

ただ、これはあくまで注意書きとして増えただけで、実質的な問題は文章の正確な読み取りがほとんどなので、形式になれさえしてしまえばそこまで問題ないように思います。

冒頭の文が「授業の準備のため〜」という形になっています。さらに、問題文がすべて英語になっていますね。

リスニングは大きく設問はかわりませんが、大問によっては英文放送が1回のみになる問題もあるので、難易度が少し上がっているようです。

対策

さて、大きく出題が変わる英語ですが、基本的にはいまと同じく基本的な部分からの学習を進めていく必要があります。

文法や発音アクセントが出ないぶん、そこの個別対策は不要ですが、長文を読むために必要な能力は変わらず単語・文法・解釈であるので、そういった基本の部分から勉強を進めていきましょう。

リスニングも、「やること」としては従来と変わりません。ただ、配点が大きくなっているぶん共通テストである程度点を取らないといけないような人は、今までより早め(具体的には受験生の夏ごろ)から少しずつ対策を進める必要があるでしょう。

とはいえリスニングもやはり長文までの上積みがあってのものなので、まずはそこまでをしっかり固めきりましょう。

教材はセンター試験向け、または共通テスト向けに出されている予想問題など何でも良いでしょう。

放送が1回のみになる設問もあるため、今まで以上に「先に設問を読む」だったり「注意すべきキーワードを掴んでおく」だったりを徹底しましょう。

国語

記述式が大きく騒がれていましたが、結局廃止になったため、大きな変更点は有りません。ただ、細かい傾向の変化はありそうなので、こちらも詳しく見ておきましょう。

配点・問題構成

配点自体は大きく変わらず、今まで通り大問4つ構成で各50点になっています。

現代文の記述式問題は、これらの大問とは別、つまり200点の外で計算されるように出される予定でした。

記述式の廃止によっても、そのはみでた大問が削られるだけなので、結局これまでどおり、それ以外の大問では、評論が第1問、小説(詩)が第2問、古文が第3問、漢文が第4問というふうになります。

これらの設問の内容で大きく変わるのは主に以下の2点。

  • 評論に「法律の条文」「掲示物の読解」なども含まれるようになる
  • 小説が「詩歌」も含む問題形式になる
  • 各設問に「生徒のやりとり」などが含まれるようになる

いずれの変更も、より実用面や多様な言語の使用を想定しているものと言えます。

評論については、条文や掲示物に加えて短めの説明文を読み取っていく必要があるため、今まで以上に「書いてあることを正確に読み取る」ことが求められます。さらに、根拠の箇所も多くの出典に散らばるため、ここを上手に処理していかないといけません。ただし、その分具体的な説明や「これに当てはまる例はどれか」のような問題が増えるため、いままでの単純な読解よりは難易度自体は落ちると思われます。

小説がやっかいなところで、今までのような小説であれば評論と同じような読み方を基本的にしていけば点が取れたのですが、詩やエッセイなどから幅広く読み取ることが求められるようになるので、より詩の解釈や表現技法について知っておく必要があります。「本文に書いてあることだけを正確に読み取る」ことには変わりないのですが、より「書いてあることを表現技法に照らし合わせて解釈する」能力まで細かく求められるというわけですね。

古文・漢文は大きく変わらないのですが、今までになかった「漢文が示す故事成語」を問うたり、文章の解釈を生徒同士がしてその空欄を埋めたりする問題が出ています。

生徒の会話を埋める、という形式はなかなか解き慣れないものですが、結局生徒が話しているのはいままで設問で「どういうことか」などと問われていた内容なので、きちんと読み取れればむしろヒントになりえます。

対策

基本的に聞かれていることはやはり変わらないので、現行のセンター試験の対策をベースにしていきます。

その際、点数が上がりやすい古文・漢文をまず着実に押さえるようにするのがポイントです。

ある程度センター試験までの対策ができれば、10〜11月頃から問題形式に慣れていくことが重要になります。こちらも予想問題集などを活用しながら対策していきます。特に小説や評論・実用的な文章の読解はなかなか慣れていないことが多いため、綿密に対策していきましょう。

 
他の科目についてはまた別の記事で!

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共通テストでの民間試験利用延期で起こることは?(再掲)

共通テスト民間試験導入延期の対策は?

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学習塾STRUXの橋本です。

今回の記事では、2019年11月に発表された「共通テストでの民間試験利用の延期」について、STRUX塾長としての意見とそれによる影響を書いています

 
 

「大学入試への民間試験導入の延期」会見の要点

改めて会見の要点を簡単にまとめておきます。

実際の会見でなされたやりとりも踏まえてまとめていければと思います。

2020年度の「大学入試英語成績提供システム」導入延期

入試改革の最たるものの一つに「大学入試英語成績提供システム」の導入がありました。

そもそもこのシステムは、大学入試に英語4技能を測る試験を導入したいという狙いのもと実施される予定でした。

民間の英語試験(英検、GTECなど)と連携した共通IDを使い、一定のランクを取得していることが受験資格として組み込まれることになっていました。

 

実際、多くの国立大では英語力を共通で図るCEFRという指標でA2以上(英検で言えば2級〜準2級相当)が必要とされ、今まで英検・TEAP利用入試などを導入していた大学でも同システムを使って加点を判断するということになっていました。

今回の会見では、この「大学入試英語成績提供システム」の2020年度からの導入を延期するということが発表されたというわけです。

理由としては、再三問題として挙げられていた「受験料が高く、経済状況によって受ける回数に差が出てしまい、公平な受験にするのが難しい」「会場が少ない地方の高校生は、受験できる民間試験も限られるため機会が均等にならない」といった不平等の問題、また会場が決定していない、共通ID導入での日程的混乱などからの運用体制の不安が挙げられています。会見ではとくに前者の「経済的・地理的状況での不平等」に言及されていました。

会見内ではさらに「現段階で文部科学大臣として、自信を持って受験生におすすめできるシステムになっていない。これ以上決断を遅らせることは更に混乱を招くため、このタイミングで決断した」という旨が述べられていました。

 
 

この1年を目途に再検討

そもそも、この改革は「高大接続改革」とよばれるもので、全体的な改革の完成は新しい学習指導要領に完全に置き換わる令和6年度入試までにさまざまな改革を行っていこうというものの一環です。

共通テストの導入や推薦・AO入試の呼称変更などもこれにあたります。

そのうち、第1次の改革の一部として実施されているのがこの「大学入試英語成績提供システム」なわけです。

延期したあと、どのように実施していくかについては会見で「グローバル化の中で4技能は必須」としたうえで「令和6年度の大学入試に向け、私(文部科学大臣)のもとに検討会議を作り、今後1年を目途に検討を重ねる」としています。

 
 

なぜ「英語の民間試験」は批判の対象に?問題点は?

とまあ、こんな感じで会見は行われていたわけですが、前々からこの「民間試験導入」については様々な意見があったわけです。

1. 地理的・経済的な面で不平等

いちばん大きな問題が「不平等」ということ。

あらゆる高校生が関わる大学入試、しかも国や大学入試センターが中心になり実施する公的性格の強い入試システムであるだけに、様々な面での平等性は担保されている必要があります。

これが私立大であれば、まあ私立大は企業なわけなので(学校法人)、利益を上げるという部分を大事にしないといけないわけです(それが資本主義の原則ですから仕方ない)が、行政が主体となるのであれば話は別です。

公的機関が実施する以上すべての受験生になるべく均等な機会を与えるべきですが、今回そういう公平性が求められる制度においてなかなか構造的な欠陥があるわけです。

 
 

1つ目が、経済的な理由により不平等が生じること。

たとえば、英検S-CBT(多くの受験生が受験するであろうもの)。A2に必要な2級レベルの受験での1回の受験料は7,500円。準1級だと9,800円となります。

 

英検はまだいい方で、他の入試だと1回あたり2万円程度の受験料が発生することも。

「成績提供に利用できる受験は2回まで」と回数を制限しているので、「お金がある方が何度も受けれるので成績が伸びやすい」という部分はだいぶ解消されているのですが、それでも「前年までに何回か受けておいて練習する」とか「他の入試制度も活用して一番自分にあったテストを活用する」といったことができるかどうかはものすごく大きな差。

受験料だけでもそこそこの負担になるため、人によっては1回だけ、しかも一番安い級・試験しか受けれない、ということもあり、問題とされています。

まあ、民間試験を使う、という時点でそこに利益が発生してしまうため、そもそものところに問題はあるのですが。

 
 

もう一つは、地理的な理由での不平等。

英検S-CBTについては、受験会場は全国260のテストセンター、とされていますが、詳しい発表はない上、遠方に住んでいる場合はなかなか受験できないということも。

他の民間試験に至っては都道府県庁所在地でしか実施されないとか、英検もCBTは全国15都道府県でのみ実施とか。何かの理由でS-CBTが受けられなかった場合、たとえば鹿児島や宮崎の高校生は福岡まで出て受検しないといけないということも起こるわけです。

 

もちろん何かしらの試験を近い会場で受験することはできるのですが、やはりこれも複数の選択肢や会場がある都市圏のほうが有利であることはいうまでもなく、非常に難しいものとなっています。

「身の丈にあった〜」発言が話題になってましたが、この発言もこういった格差から来ているわけですね。(その格差を文科省のしかも大臣が認識していて、かつ肯定しているというのは看過できないことですが。)

ここについては、会見でも「民間団体に任せてしまったのが無理があった」と話されていましたし、より政府が主導となって会場の確保や機会の確保を目指すべきだと考えられます。

 
 
 
 

2. 実施体制が不透明・未定

2つ目の問題としては、実施体制がまだ確定していないところ。

英検については比較的検討も進んではいますが、それでも「受験者数を見て日程・会場を決める」というパターン。

会場を押さえたり日程を押さえてそこに向けて準備したり、は本申込時に決まるとされています。

それ以外の入試についても、そもそもTOEICが辞退したように、綿密な準備ができていないのが実情です。

ベネッセが実施しているGTECでも、大学入試英語成績提供システムについては11月当時でこれだけの発表しかされていませんし、準備の面でもずれが見られています。

この点についても、あらゆる問題が直前になって出るのではないか、等不安の声が出ています。

 

入試で利用される「共通ID」の発行についても、告知が直前であったり、既卒生への配慮が少なかったりと様々な問題が指摘されています。

 

この準備については、どうしても国が直接民間団体とやりとりしていくのではなく、間に大学入試センターを挟む形での運用となってしまっているため、なかなか手が回っていない、反映が遅いなどの実情があります。

 
 

3. そもそも試験内容は大丈夫?

ここはあまり今回とは関わりのない話ですが、そもそもの問題として「英検やGTECで4技能が正確に測れるのか?」という問題点は以前から指摘されています。

国際的には、TOEFLやIELTSといった資格が一般的となっている一方、英検やGTECはあくまで「日本で作られた」日本人向けの英語検定試験です。

英検を受けたことがある人はわかると思いますが、スピーキングの試験でも正直何が見られているのかわからなかったり、試験官が日本人だったり。英検のライティングも、文法ハチャメチャでも伝われば点が来たり。「ほんとうに4技能を正確に図れているのか?」と疑問視されていることもあります。

「グローバル化」に必要だと言われつつ、じゃあ実用できる英語がほんとうにこの検定で身につけられるのか、身についてるか判定できるのか、というところが疑問視されているので、そういったところも批判の対象になっています。

 
 

受験生・高校生必見!今後の入試や受験生への影響は?

そんなこんなでこのタイミングで延期となってしまった「大学入試英語成績提供システム」ですが、今後受験生・高校生にはどう影響してくるのでしょうか。

 

大学入試英語成績提供システムの導入延期によって影響を受けるのは、次の2つ。

  1. (主に国公立大学)出願要件として課していた部分の対応
  2. (主に私立大学)外部試験利用型入試を実施する大学の、入試方法

2の方はぶっちゃけ、いままでも同じように実施している大学(立教とか、早稲田国教とか)ばかりなので、そのノウハウを使って継続するはずですし、そこまで問題ではないと思います。

面倒なのが1。国が「4技能使うからみんな導入してね!」といいまわり、大学の教授陣も喧々囂々の議論を重ねてなんとか導入したシステムなわけで、これが延期となると(まあ大学側は怒るとしても)3パターンの対応が想定できます。

*例えば東大なんかはわざわざこういう文書を出して「WGの答申でも指摘されているように、公平・公正という観点からも実施の観点からも、この施策にはなお多くの課題が未解決のまま残されており、残念ながら受験生が安心して受けられる体制が整っているとは言えません。特に、これまでの大学入試センター試験の経験や TOEFL の海外でのトラブル等を考えれば、英語認定試験においても実施段階でさまざまな問題が生じることは十分予測されますが、そうした場合に大学入試全体を統括すべき文部科学省や大学入試センターがどのような責任体制をとり、受験生の保護という観点からどのような対応策をとるのかは、今もって明確にされていない状況です」(引用)と明確に検討段階で述べていて、いわんこっちゃないという感じなんだと思いますが。

1つ目の対応としては、条件を撤廃すること。今まで通り書類を提出すれば無問題、または共通テストの点数を利用して2段階選抜制にする、など。一番シンプルな方法ではありますが、せっかく他の入試改革が進んでいる中で、4技能を全く利用しないというのはどうなのか、また4技能の習得のために今年度の外部試験などで予行演習を重ねてきた受験生や、それ込みでスケジュールを組んでいた受験生の行き場はどうなるのかなど問題がないとは言えません。

とはいえ、現状ではこの方針の大学が大多数を占めています。

 
 

もう一つのパターンは、別の条件を使っていくこと。

先に述べた東大の例では、「民間の外部試験を受験できない場合は、高校の調査書や教師からの証明書を受験資格として扱う」ようになっており、これは多くの大学で導入されようとしていたものです。

大学ごとに経済格差や地理的なものに配慮した結果だといえますが、これをそのまま活用するとなるとそれはそれで学校の手間はかかってしまいます。

調査書だけであればどうせ作るのですが、英語力の証明なんてものはなかなか難しいので、そこをどこまで求めるのか難しいところだと言えるでしょう。このパターンを使う大学は今のところほとんどなさそうです。

 
 

ラスト、無理やり英検などの外部試験を使うこと。

要は、「大学入試英語成績提供システム」の導入が見送られてはいるけど、独自で英検2級、GTECでこのスコアを受験資格として扱いますよ、というパターン。

ノウハウが有る私立大学などは可能性もありますが、やはり根本的な公平性の担保は難しいため、「出願資格」として出す学部はこれまでも出願要件にしていた国際系の学科に限られそうです。

 
 

まあそういったふうに、大学側もいろいろな検討をここからまた重ねて行くわけですから、受験生がそれを知って、安心して受験に臨めるのはまただいぶ先の話になってしまうわけです。

じゃあ、どうすべきか?というと、こればかりは常にアンテナを張っておくしかないですね。

大学が公表するのをしっかりチェックしておいて、自分が受けたい大学はどういう方針で行くのか、それに合わせるためにはどう勉強していけばいいのか、といったところを考えていく必要があります。

もう一つは、きちんと勉強し続けるところ。

どうせ大学では英語が必要です。英語文献読んだり、英語で学会で話したり。

最近ではどの大学も英語の授業を入れているわけですから、英語の学習は怠りなく進める必要があります。

 
 

制度はごちゃごちゃしていますが、大学側が「4技能」をきちんと身につけた学生を求めているという事実は変わらないので、何らかの形で勉強をしていく、もしくは頭の片隅にとどめておくことは必要です。

また、以前から英検などの外部試験を利用している大学であれば、引き続き外部試験を使うことが多いと思われるので、その点も注意しておきたいですね。

あとは、その他の入試改革に影響が出ないか、という点が心配ですね。

これを皮切りにして、ほかの共通テストなどについても方向性が変わることはあると思うので、注視していかないといけないかなと思います。

(このあたりは僕の記事でも定期的に触れていければと思っています。)

 
 

高3生もひとごとではない

大学入試英語成績提供システムが延期になったということは、今の高3生が仮に浪人したとしても、「なんとかなる」ようにはなったわけです。

共通テストの変化はまあきちんと対策すれば良いので、そこに関してはむしろ選択肢としては広がったのかなと思っております。

ただ、今後の動向次第では高3生の来年度以降の入試にも影響が出てきかねないので、浪人も考えているという高3生は注意深く見ておくことも大事ですね。

 

個人の感想

あとはまあ個人の感想として、一連の騒動について書いておくんですが……(どうでもいいひとは読み飛ばしてください)

 
 

そもそも日程的に安定した運用は難しいのではないかとか、受験回数や居住地で格差がどうしても出てしまうとか、そういった問題点は改革が考えられていた当初からずっと言われていたことなわけです。

それを世論が盛り上がり反対の声が大きくなってくるまで延期に至らせなかった判断は、どうしても遅いなあと感じてしまうわけです。

例えば今年の英検ももう2回終わってしまっていて、「来年度の英検に縛られないのであれば、今年のうちに受けておいたのに」とか、いろいろあるわけですよ。

受験はいまや1年計画ではないので(というかそういうシステムにしておきながら)、ここで手のひらを返すのは少し遅かったな、という印象です。

 

もちろん政治的には、共通テストと同じタイミングで改革を入れたい、やるといった手前やらないと面目丸つぶれだということがあるんでしょうが、受験生はそんなことどうだってよくて、限られた入試というタイミングでいかに力を発揮するか、いかに行きたい大学に行くかで一生懸命なわけです。

大人の都合で高校生・受験生の選択肢を狭めるのが一番良くないこと、あってはならないことだというのはぜひとも痛感してもらいたいなと思います。

「身の丈」なんて言語道断ですよ。

学習塾STRUXという塾をやっていますが、この塾も「経済面、環境面での格差を乗り越えて、自分が希望する選択肢を選べるように」というところをひとつの解決しなければならない課題として掲げています。

そこが揺るがされるような事態には、断固として立ち向かっていかねばという所存です。

入試改革についてはどんどん進んでいくわけですから、今回のことを機に、なるべく公平で、選択肢を狭めることが少なくなるような入試制度を整えてほしいと思います。

*記事に掲載中の学習塾STRUXプランは執筆時点でのものであり、一部変更となっている可能性がございます。詳しくは料金ページをご覧ください。