大学受験に臨む上で欠かせないのが「勉強計画」。
中学・高校受験に比べて大学受験は選択肢が多いです。
例えば、大学ごとで求められる受験科目が異なるのはもちろん、学部ごとでさらに科目や配点、その他の条件が異なることもあります。
そのため、その複雑さに戸惑ってしまう生徒さんも少なくありません。
この状況下で周りに流されることなく自分の志望校合格に必要な勉強だけをやり通すには「勉強計画」を作成する必要があります。
今回の記事では「勉強計画の重要性」「勉強計画を立てる上での注意点」について紹介していきます。
そもそもどうして勉強計画が必要なのか?
それでは、大学受験においてどうして勉強計画が必要なのでしょうか?
具体的に勉強を立てることで以下のようなメリットがあります。それを一つずつご説明しましょう。
勉強計画を立てると受験の全体像が分かりモチベーションが上がる!
まず勉強の全体像を掴むとはどういうことでしょうか。それは「自分の年間計画を作成する」ということです。
「1ヶ月後や3ヶ月後ではなく、1年先の遠い将来のことまで考える必要があるのか」
「1年計画を立てたことがない私がいきなり作成できるの」
といった疑問を持つ方もいるかもしれません。
確かに1年先のことまで考えるというのは簡単なことではありません。しかし、受験計画は必ず年間単位で立てるべきです。
その理由は「自分の受験勉強に対するモチベーションが格段に上がる」ことにあります。
受験勉強の中で最も困難なことのうちの一つが「モチベーションの維持」です。
勉強し始めた時は誰でもやる気に満ち溢れていますが、勉強時間が進むにつれそのモチベーションを保つことはどうしても難しくなってきます。
また、勉強を進めていくにつれて今の勉強法が正しいのか、不安になってしまう生徒さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
そういった問題を解決するために必要なのが「勉強計画」なのです。
年間の勉強計画を持つことで、
- 自分の勉強は今どのくらい進んでいるのだろうか?
- この時期に過去問に取り組むためにはいつまでに基礎は終わらせるべきだろうか?
- あとどのくらい勉強すれば目標点数を取れる実力がつくのだろうか?
などといったことが視覚的にハッキリわかります。
そうすることにより自分が受験勉強の中で何をするべきかが明確になり、漠然とした不安が消えモチベーションが上がるのです。
また、大学受験は中学受験や高校受験と比べて複雑化しています。
大学受験における出題範囲は非常に広く、受験校や学部、学科の多様化も進んでいます。
そのため、全体像を捉えるのが容易ではありません。
全体を眺めることでそこから自分が何をすべきかを冷静に見極めることができます。
しかしそれができなければ、短期的な視点で「今自分の目につくところ」、例えば苦手分野からやみくもに勉強してしまうことが多いのです。
もちろん苦手分野を勉強するのは悪いことではありません。しかし、受験では基本的に複数科目を使います。
それを考えると「どこまで苦手分野を勉強するか?」ということも決めずに、ただただ参考書を解くだけというのは危険です。結果的に他の科目がおろそかになる可能性があります。
このように長期的な計画を持たない生徒さんの多くは「この勉強の仕方を続けても大丈夫だろうか」「この計画のまま勉強を進めて志望校のレベルに到達できるだろうか」といった不安を感じてしまい、明確な根拠の無いままなんとなくで勉強してしまうのです。
しかし計画があることで自分のやるべきことが明確になり、受験勉強という長い戦いの中でも道に迷うことがありません。
このように、道に迷わず長期的なにモチベーションを保つためにも、年間計画は必須なのです。
受験計画があると自分に必要な勉強にだけ取り組める!
また、勉強計画を事前に立てておくことのメリットとして「自分に必要な勉強に集中して取り組める」ということも挙げられます。
具体的に言うと、「必要のない勉強を減らせる」「やるべき勉強が明確になる」ということが可能になります。
それでは、どうして受験計画があることで「必要のない勉強」「やるべき勉強」を知ることができるのでしょうか。
まず不要な勉強を知る上で重要なのは「大学の問題形式を把握すること」です。
どこに重点をおいて勉強するべきかという対策は大学の問題形式によって異なります。
おなじ国公立大学でも、東京大学と京都大学では出題内容に以下のような差が見られます。
東大英語 京大英語
第1問:要約・空所補充 第1問:和訳・内容説明
第2問:英作文 第2問(1)-(3):和訳
第3問:リスニング 第2問(4):自由英作文
第4問:文法・和訳 第3問:和文英訳
第5問:長文読解
同じレベルの東大・京大でもリスニングの有無、英作文や和訳の配点比率など大きく異なります。
これだけ多様な大学受験を乗り切るためには、各大学で求められる学力にあわせて勉強を進めつつ、「必要のない勉強は削っていく」必要があるのです。
他には、一橋大学のように「学部によって大きく科目毎の配点が違う」という場合や、多くの私立大学のように「そもそも学部学科で問題が全く違う」ということも珍しくありません。
しかし、勉強計画を作成する時点である程度志望校の問題形式を下調べしておくことで、無駄な勉強時間を削ることができるのです。
そして勉強計画があることで「志望校合格に必要な勉強」がわかります。
京都大学志望にも関わらずリスニング対策を行っても点数には直結しません。
反対に東京大学を志望しているのであればリスニングは必須ですが、英文和訳の練習にはそこまで時間を割くべきではありません。
このように事前に志望校の分析を行うことで「志望校合格に必要な勉強」を明確にすることが可能になり、不安なく勉強に集中できるでしょう。
限られた時間を有効活用できる!
実際に受験生(高校3年生)が受験勉強に使える時間はどれくらいでしょうか。現役生の勉強時間を調査した記事からは以下のことが指摘されています。
現役生の中で最も多かった平日の勉強時間は「4〜6時間未満」。そして最も多かった休日の勉強時間は「10〜12時間未満」。
一週間の平日の勉強時間を25時間、休日の勉強時間を22時間と仮定しましょう。1年間は52週間ですから、年間で勉強時間に費やせるのは約2,400時間!
思ったより少ない時間だという印象を受けるのではないでしょうか。高校3年の時期であっても部活動の活動が残っていたり、学園祭などの学校のイベントも行われます。
受験だけでなく学校生活を充実させるためにも事前に使える時間を把握しておくと良いでしょう。
勉強習慣を身につけやすくなる!
さらに勉強計画を立てることの利点として「勉強習慣を身につけやすくなる」ことが挙げられます。
普段から勉強する習慣を持っていないのに、いきなり1日4,5時間の勉強をすることは難しいです。
たとえ1日1,2時間であっても自分に合わせた勉強計画を立てることで、徐々に勉強する体力が身に付いてくるものです。
計画通りに勉強することができると達成感が得られ、さらに勉強に前向きに取り組むようになるでしょう。
無理をせずに自分にあった勉強計画を立てることを心がけることが大切です。
なぜ大学受験勉強において勉強計画は力を発揮するのか?
ここまでは大学受験において勉強計画を立てなければならない理由を紹介しました。
しかし、中学受験や高校受験で勉強計画を作成していなかった生徒さんの中には「今までのやり方で大学受験も乗り切れる!」と考えておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、それは大きな間違い。中学・高校受験に比べて大学受験は複雑化しているため、昔の感覚で挑んではダメなのです。具体的にどうしてでしょうか?
大学受験は変数が多いから!
大学受験において勉強計画が効果的な理由の一つとして、「大学受験では変数が多いから」ということが挙げられます。
先述したように、大学受験は中学・高校受験と比べて複雑です。
具体的に、大学受験では「志望校」「現在の成績」「残りの期間」「使う科目」などによってやるべきことが変わります。
これだけ複数の要素が絡み合っているので、何から勉強を始めるか、次に何を勉強するか、決めるのは容易ではありません。
さらに進むべき方針が無いと勉強の途中で迷ってしまうこともあるでしょう。
だからこそ、受験勉強のスタートできちんと勉強計画を立てておき「どの期間になにをやるか」「どういう順番でやるか」を決めておくことが重要になるわけです。
それでは変数には具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
試験本番までの残り日数
「変数」を考えていく上でまず「スケジュール」を押さえておきましょう。
大学試験のスケジュールを「大学入学共通テスト」「国立」「公立」「私立」に分けて紹介します。
私立と国立・公立では試験本番までの日数が異なる上、私立ごとにスケジュールは異なるため、志望校の日程は事前にチェックしておきましょう。
*すべて2021年実施の入試の例です。
大学入学共通テスト
1月16日(土)・17日(日) 大学入学共通テスト(第1日程)
1月30日(土)・31日(日) 大学入学共通テスト(第2日程・追試験)
2月13日(土)・14日(日) 大学入学共通テスト(特例追試験)
国立
前期日程試験実施 2月25日(木)以降
後期日程試験実施 3月12日(金)以降
公立
前期日程試験実施 2月25日(木)以降
中期日程試験実施 3月8日(月)以降
後期日程試験実施 3月12日(金)以降
私立
入試実施・合格発表 2~3月(大学により異なる)
上記のスケジュールから分かるように大学共通テストを利用するかどうかで試験までの残り日数が大きく異なります。
特に現役生にとって1ヶ月あれば成績は大きく飛躍する可能性もあります!
また校内推薦やAO入試など比較的早い段階から入試が実施される場合もあります。
自分がどの試験制度を利用するかによって残り日程が変わるということが「大学受験における変数」となります。
必ず残り日数を意識して勉強計画を立てることが肝心です!
志望校レベル
学習計画を立てる上で「志望校のレベル」を確認することは必須です。
なぜなら学習計画を立てていく中で志望校のレベルや現状の実力によってやるべき学習内容は変わってくるからです。
自分が志望する大学のレベルだけではなく、各科目ごとの出題の難易度を調べましょう。それと同時に自分の現状の実力を、模試や過去問演習を通して知ることが重要です。
このことを行った上で、仮に英語であれば「単語力が足りない」「500字長文問題になると途端に混乱してしまう」「1文1文の文章の構造がわからない」といった問題点が浮かび上がってくるはずです。
単に偏差値と自分の実力に開きがあるというだけでなく、どの分野や単元で自分の実力が足りていないかを知り、勉強計画を立てることが重要です。
志望校の試験内容
最後に志望校の試験内容について紹介します。
勉強計画を立てる際には、私立か国立かによって使用する科目が変わってくることは押さえておきましょう。
私立文系の基本的なパターンは、「3教科3科目型」。
1.外国語
2.国語
3.地理・公民or 数学IA・IIB
国語に関しては、現代文と古文との複合問題が基本的。しかし現代文のみ(外国語学部、家政系など)や現代文、古文、漢文からの出題(文学部と上校)もあります。
地歴・公民に関しては、
日本史/世界史/政治・経済/地理 の中から1科目選択。
ただし、政治・経済や地理での受験を認めていない大学・学部も見受けられます。
数学に関して、大学・学部によって出題範囲が大きく異なります。また、早稲田(法・文)明治大(法・文・国際日本)青青山学院(文)など数学を認めていない大学もあります。
国公立文系の基本パターンは以下の通りです。
1.共通テスト(5科目、7教科)
外国語、数学IA、数学IIB、国語、地歴・公民、地歴・公民、理科
地歴・公民
→日本史/世界史/地理/現代社会/倫理/政治・経済/倫理・政経の中から2科目を選択。
理科
→物理基礎/化学基礎/生物基礎/地学基礎 の中から2科目を選択。
外国語
→基本は英語。リスニング試験あり。
2.二次試験(前期日程)
外国語、数学IA・IIB、国語、地歴・公民
上記のうちから2~3教科を選択するのが一般的。
国立2次試験の主流は2~3教科型ですが、東京大、京都大、一橋大、名古屋大などの難関大では4教科を課すなど、科目数、内容は大学・学部によって異なります。
また後期日程では教科数を1~3教科に減らすケースや、小論文や面接、実技を課す大学もあります。
それに加えて二次試験を行わず、共通テストの得点だけで合否を決定する大学もあります。
このように、勉強計画を作成する段階であらかじめ志望校の問題形式を調べておくと直前で焦ることなく対策を行うことができるでしょう。
勉強計画はやみくもに立てるべきではない!その注意点とは?
大学受験は「変数」が多く、そのため事前に勉強計画を立てることが重要であるということが確認できました。
では実際に勉強計画を立てる時の注意点としては何があるのでしょうか?
志望校までの距離を正確に把握する
大学受験における計画と旅行計画には共通点があります。
それは「目的地までどれくらいの期間を要するか」「目的地までどれくらいの距離があるか」「目的地までどのような方法でたどり着くか」を事前に把握する必要があるという点です。
目的地を確定することで「移動手段」「旅行費用」「宿泊地」など具体的なことを決めることができるようになります。
大学受験においても志望校までの距離を把握することは重要です。
それは受験勉強に本格的に取り組む前に、大まかな道筋を立てることで「現状どのような勉強をするべきか」が明確になるからです。
受験勉強を開始した時だけでなく、受験勉強を進めていく中でも「自分と志望校との距離が残りどれくらいか」を常に意識することが大切です。
どうやって距離を知るの?
ではどのように自分の実力と志望校との距離を知ることができるのでしょう。
そこで自分の実力と志望校との距離を測るためにオススメしているのが「パスナビ」と「過去問」の利用です。
パスナビは、各大学の「必要科目」「科目の点数配分」「合格最低点」「出題範囲」などが掲載されているサイトです(もし不明な部分があれば直接大学のホームページを調べてください)。
そのため、具体的に志望校から求められている学力を知ることができます。
次に過去問を見て「出題傾向」「大問構成」「時間配分」などを確認していくようにします。
時間に余裕のある生徒さんは志望校の過去問を1年分解いてみると、より「どういう問題が出るか」「どういう問題を取れるようになるべきか」がわかるので、オススメです。
現段階で解ける必要はありませんが、志望校の問題の雰囲気を早めに知っておきましょう。
不要なものは削る
今まで述べてきた通り、大学受験ではやるべきことがほぼ無限にあります。特に、過去問を解いたり志望校の情報を見たりすると、やるべきことが大量にあるとわかるはずです。
しかし勉強計画を立てるときに「すべて」盛り込もうとすると大変なことになります。なぜなら、足し算であらゆる要素を詰め込んでしまっているからです。
この状態では仮に計画ができたとしても、試験本番までにやりきれなくなってしまったり、詰め込みすぎて途中で挫折してしまいます。
有限な時間をきちんと無理なく使うためには、不要なものは削って計画を立てることを意識しましょう。
この「不要なものを削って計画を立てる」ということに必要なのが「逆算思考」というもの。
逆算思考とは、まずはゴールを決めてそこから順番にさかのぼることでやるべきことを洗い出していく、という考え方です。
受験当日までの期間から逆算して、今優先的に取り組むべきことは何かを決めましょう。
それでは「逆算思考」の一例を挙げてみます。
例)英語の勉強。
12月から過去問を開始
↓
11月までに自由英作文・速読を身につける
↓
夏休みまでに英作文の基礎固め、長文の問題集に取り組む
↓
6月までに単語・文法を一周する
このように考えることで「今何をするべきかわからない」という事態を防ぐことができます。
具体的に計画を立てる
具体的に計画を立てることで、「その日の」やるべきことが可視化されます。具体的な内容にまで落とし込んだ方が行動に移しやすいことは先ほど確認しました。
ただし、計画に具体性は必要ですが「ある程度のざっくりさ」も考慮に入れましょう。
「ざっくり立てる」というと、一見「具体的な計画」と真逆のことのように思えますが、両者は矛盾しません。
というのも、キツキツで計画を立てていると必ずどこかで遅れてしまい、そのときに修正しづらくなってしまいます。
また、予想外の出来事によって計画が遅れざるを得ない状況も起こり得るでしょう。しかし、ざっくりとした計画にしておけば計画が順調に進まない時にも対応できます。
また、計画は「遅れるもの」だと思っておいて、週末に予備日を設けておくとよいでしょう。
そしてなるべく、1日1日の計画というよりも、ざっくり週ごと、月ごとに立てておいて徐々に具体的にしていく方が良いです。
こうすることによって、自分の勉強のペースなどとも相談しながら計画に取り組むことができます。
その代わり、必ず毎日計画を見て、目標との差を確認するようにしましょう。
無理な計画は立てない
勉強計画を立てる上で、「現実的な計画」を目指すことが重要です。
理想的な計画を立てても、実際にその計画を1年という期間から見て実行することができない場合、その計画は意味を持ちません。
特に計画を立てるのに慣れていない人の場合、「上限いっぱいの計画」を立ててしまう傾向があります。
それは現状やるべき参考書に優先順位をつけずに片っ端から予定を詰めていくようなやり方です。
また時間にも余裕を持たせた計画作りを心がけましょう。
毎日長時間、勉強することは容易ではありません。もしかしたら、模試の成績や学校の試験の結果でやる気が出ない時期もあるかもしれません。
自分の一日の勉強時間や体調管理を踏まえた上で自分にあった勉強計画を立てることが重要です。
計画に関して分からないことがあれば無理せず相談しよう!
受験計画を立てて、自分がやるべき勉強内容がわかっても「具体的にその勉強にふさわしい参考書ってなんなのだろうか?」と迷ってしまう方が入るかもしれません。
参考書というのはとにかくたくさんの種類があります。
英単語帳一つとっても「志望校レベル・学年・構成・テキストメイン or イラストメイン」などさまざな判断軸があるもの。
その中から自分にふさわしい1冊を見つけるというのはかなり大変です。せっかく計画を立てても、この参考書選びを間違ってしまったら実際の勉強も台無しになってしまいます。
そのため、わからなければ必ず相談しましょう。知識の足りない状態でどれだけ迷ってもなかなか答えは見つかりません。
参考書選びに不安があるなら無理せず相談することをオススメします!
まとめ
今回は「勉強計画を立てる理由」「勉強計画の具体的な立て方」「勉強計画を立てる上での注意点」の三点を紹介しました。
予想以上に勉強に取り組む前に調べなければならないことがあることに驚いた方もいらっしゃるでしょう。
特に「今の勉強法に不安を抱えている」「何の勉強から始めたらいいのかわからない」生徒さんはぜひ今回紹介した勉強計画を実践してみてください。
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