大学受験においては、まず志望校を決めることが何よりも重要です。
- 自分の興味のある分野の勉強がしたい!
- 面白そうな授業がある!
- 昔から憧れていた!
など、志望校を決める動機には様々なものがあるかと思います。
受験勉強は長く大変な戦いです。しかし、上記のように自分のモチベーションを見出せる大学を見つけて目標に設定できれば、大変な受験勉強にもやる気が出るのではないでしょうか?
それでは、実際に行きたい志望校が決まりその志望校についての情報を手に入れた次は何をすれば良いのでしょうか?
「よし!やっと受験勉強が始められる!」と思う方もいるかもしれません。
しかし、まだ始めてはいけません。焦りや不安から早く勉強を始めたいと思いますが、その前にやらなくてはならないことがあります。
それは「志望校の目標点数を決める」ということです。具体的には「入試本番ではどのくらいの点数が必要なのか?」ということを明確にします。
これを行うことにより自分がやるべき勉強内容がはっきりわかるので、入試本番までの限られた時間を有効活用でき、志望校合格まで最短ルートで行くことができます。
今回の記事では「志望校の目標点数の決め方」を詳しく解説していきます。
ポイントを押さえて憧れの第一志望校に合格しましょう!
志望する大学の入試本番の目標点数を決めよう!
志望校分析が終わったら、入試本番の目標点数を決めていきましょう。
「点数」という具体的なゴールがわかっていると、そのためにどのような勉強がどのくらい必要なのかわかってきます。
時間は有限です。例えば高校3年生の4月から本格的に受験勉強を始めたとして、「平日4時間と休日8時間で週に36時間」の勉強を入試本番の1月まで39週間続けたとすると、残された時間は1404時間(39週間×36時間)です。
もし入試本番まで時間が無限にあれば、好きな時に好きな科目を好きなだけ取り組むのも良いでしょう。
しかし実際には時間が無限にあることなどありえません。そのため、この1404時間(39週間×36時間)をどのように有効活用していくかが合否の分かれ目となるのです。
「目標点数」というゴールを設定しておくことは、勉強の時間配分を考える上でも非常に重要になってきます。では、どのように決めていけばよいのでしょうか?
目標点数は大学の合格最低点から考える
志望校分析の時に「合格最低点」と「配点」を調べましたね。入試本番の目標点数は「合格最低点」を基準にして考えます。
その理由はシンプルで、志望校の合格最低点を超えれば合格できるからです。
入試では満点を目指す必要はありません。むしろやみくもに満点を目指してしまうと、勉強量が膨大になり限られた時間を有効活用できなくなります。
必要最低限の労力で合格するためにも、合格最低点を基準にして考えましょう。
しかし、だからと言って合格最低点を「そっくりそのまま」目標にして勉強するのは非常に危険なことです。
なぜなら、毎年合格最低点は上下するため。全く同じ点数が最低点になるということはほぼありえません。
「去年の合格最低点では今年は不合格だった」なんてことは十分にありえるのです。
では、合格最低点を基準にしてどのように目標点数を決めていけばよいのでしょうか?
あてはめてみよう!志望校の目標点数の公式
目標点数は高すぎても低すぎてもいけません。たしかに目標は高ければ高い方が良いですが、受験生の達成するべきことは「高得点を取る」ではなく「志望校合格」です。
そのため、目標点数を高くしすぎてしまうとムダな勉強が増えてしまう可能性があります。
だからと言って、目標点数が低すぎてしまうと不合格か合格のギリギリのラインになってしまう可能性があるので、それもおすすめできません。
そこで、目標点数を設定する時は「志望校の過去3年間の合格最低点の平均の1割増し」を目標にすることがおすすめです。
こちらの公式にあてはめて志望校の目標点数を決めていきましょう。
実際にあてはめてみましょう。例えば早稲田大学の文学部の一般入試で考えてみます。
【早稲田大学・文学部・一般入試】
合格最低点
- 2018年度 135.1点(200点満点)
- 2019年度 134.0点(200点満点)
- 2020年度 132.2点(200点満点)
目標点数=(135.1+134.0+132.2)÷3×1.1=147点 ※小数点以下は切り上げ
いかがでしょうか?このように簡単に計算できますので、皆さんも早速やってみてください。
各科目の目標点数を決めよう!
公式にあてはめながら、入試本番の全体の合計点の目標点数が決まりましたね。次のステップは「各科目の目標点数」を決めましょう。
「え!そんな細かいところまで決めないといけないの?」なんて驚く方もいるかもしれません。
このステップは一見細かく面倒くさい作業なように思えますが、志望校合格には必要不可欠なことなのです。
その理由は「目標達成はゴールから逆算していくこと」が非常に大切だからです。
例えば、あなたが友達とご飯の約束をしたとします。待ち合わせ時間が駅に12時だったら、あなたは「8時に起きて9時までに朝ご飯を食べて11時までに支度をしよう」と考えると思います。
今回の例えでは、ゴールが「駅に12時に集合する」というものでした。皆さんも普段からこのように無意識に「ゴールから逆算する」事をしています。このことで、達成するためにやらなくてはならない事が具体的になります。
受験における目標は「志望校合格」ですね。そして、この目標を達成するために設定すべきゴールとは「全体の目標点数」です。ゴールである目標点数を超えることができれば自然と志望校に合格できるでしょう。
そして、ゴールである全体の目標点数を取るためには「各科目で何点取らなくてはならないのか?」というように細分化して考えます。
このことにより、各科目でそれぞれどのくらいの時間をどの単元に使えばよいのかが現実的に見えてきます。
このように目標を細かく設定することで、「今やるべきこと」が明確になります。ではどのように各科目の目標点数を決めればよいのでしょうか?
志望校の得点配分や得意科目・不得意科目などによって各科目の目標点数は大きくかわってきます。つまり、どんな人でもこの決め方に従えば大丈夫!という決め方はありません。
ですので、ひとつの基準として以下の3つのルールを守って各科目の目標点数を決めてみてください。
- Step1.英語・数学の目標点数は65%以上に設定する。
- Step2.国語の目標点数は70%以下に設定する。
- Step3.社会の目標点数は60%から70%に設定する。
- Step4.目標点数を整理して見える化しよう!
それでは、それぞれ詳しく見ていきましょう。
Step1.英語・数学の目標点数は65%以上に設定する。
英語と数学の目標点数は他の科目よりも高く設定するべきです。なぜなら、多くの大学でこの2つの科目の配点が高く設定されているからです。
例えば、早稲田大学・法学部の2021年度一般入試の配点はこちらです。
【早稲田大学・法学部・一般入試】3教科(150点満点)
- 【英語】配点60点
- 【地歴・公民・数学】配点40点 (世界史B・日本史B・政経・数学共通テストから1科目選択)
- 【国語】配点50点
さらに、英語や数学は勉強した分だけ点数が安定します。そのため、文系学生なら英語を得意科目にして、理系の学生なら数学を得意科目にするのがよいでしょう。
そこで、ひとつの目安として「65%以上」に設定しましょう。
実際に早稲田大学・文学部の2020年度一般入試を参考にして考えていきます。
【早稲田大学・文学部・一般入試】3教科(200点満点)
- 【英語】配点75点
- 【地歴】 配点50点(世界史B・日本史Bから1科目選択)
- 【国語】配点75点
英語の配点は75点満点ということがわかります。
英語の目標点数=75点×65%=49点(小数点以下四捨五入)
よってこの場合、英語の目標点数は49点以上になります。この得点を取るためにどの勉強をどのくらいの時間をかけてやるのかを決めてください。
Step2.国語の目標点数は70%以下に設定する。
国語はなかなか点数が安定しない科目です。なぜなら、他の科目と比較して国語は現代文の点数が普段の勉強で伸びにくく、かつ、問題によって得点の変動が大きいからです。
国語は問題のばらつきがあり、テーマによっては「全然読めなかった」というケースがあります。
だからこそ、普段の勉強で点数を上げにくいのです。満点を取る事は非常に難しいと言えます。
そのため、目標点数を高めに設定するのはおすすめしません。高めに設定したにも関わらず本番で失敗してしまったら、志望校合格の可能性がグンと下がってしまいます。そのくらい国語の得点は問題に左右されやすいのです。
国語の目標点数をある程度低めに設定する分、勉強の努力が得点に反映されやすい英語や数学で高めに設定すれば大丈夫です。
そこで、ひとつの目安として「70%以下」に設定しましょう。
それでは、同様に早稲田大学・文学部の一般入試で考えてみましょう。先ほど国語の配点は75点満点とお伝えしました。
国語の目標点数=75点×70%=53点(小数点以下四捨五入)
よってこの場合、国語の目標点数は53点以下になります。
この得点をとるために何をしたらよいか、そして万が一失敗した時を想定して他の教科でどのくらい取り返すことができるかを考えましょう。
Step3.社会の目標点数は60%から70%に設定する。
社会の目標点数は、やや高めに設定しましょう。なぜなら、社会は暗記科目のため勉強したら勉強しただけ点数があがるからです。
そのため、目標点数を低くしてしまうのは非常にもったいないです。
しかし、高めに設定しすぎるのはおすすめしません。社会で高得点をとるためには、世界史や日本史の用語集の端っこに書いてあるような知識も覚えなければなりません。
しかし多くの大学で社会の配点は他の科目と比較して低く設定されているので、時間をかけながら重箱の隅をつつくような知識をひとつひとつ覚えていくのは非効率的です。
ですので、このように時間を使うのではなく、その分を配点の高い英語や数学に回していきましょう。このような時間の使い方により、全体の合計点アップに繋がります。
そこで、ひとつの目安として「60%から70%」に設定しましょう。
それでは、同様に早稲田大学・文学部の一般入試で考えてみましょう。先ほど社会の配点は50点満点とお伝えしました。
社会の目標点数=50点×60%=30点(小数点以下四捨五入)
社会の目標点数=50点×70%=35点(小数点以下四捨五入)
よってこの場合、社会の目標点数は30点以上35点以下になります。この得点をとるために何をどこまで暗記すればよいのか、そして他の配点が高い教科にどのくらいの時間を使うことができるかを考えましょう。
Step4.目標点数を整理して見える化しよう!
ここまで全体の目標点数と科目ごとの目標点数を設定してきました。最後は、全てを書き出して「見える化」しましょう。
見える化したものは小さなメモ帳などにまとめ、よく使うファイルやペンケースに入れて持ち歩くようにしてください。
このことにより、普段の生活から「目標点数」を意識でき日々の勉強のパフォーマンスが上がります。
では実際に先ほどの早稲田大学文学部の一般入試の目標点数をまとめてみましょう。
【早稲田大学文学部の一般入試】
- 満点:200点 (英語:75点 国語:75点 社会:50点)
- 目標合計点 147点
- 各科目の目標点数 (英語:59点 国語:53点 社会:35点)
先ほどStep1で「英語・数学の目標点数は65%以上に設定する。」とあり、英語の目標点数は49点以上と設定しました。
そこで、今回の目標合計点数が147点なので、英語を59点として帳尻を合わせました。
ここからさらに、自分の苦手科目なども考慮したものに調整していきます。例えば、英語が苦手科目であったとします。
そのような場合は英語の目標点数をぴったり65%に設定して49点にします。これを補うために国語の目標点数と社会の目標点数を高めに設定します。
まず比較的点数を取りやすい社会の目標点数を80%の40点に設定します。そうすると目標合計点の147点になるためには国語で58点必要です。よって国語の目標点数が77%の58点になります。
このように自分の得意科目や苦手科目を考慮しながら簡単にできることなので、皆さんも自分の志望校の目標点数を設定してみてください。
目標点数を決めた後は受験勉強の時間配分を決めよう
ここまでで志望校の目標点数を設定することができましたね。そこで「やっと受験勉強をスタートできる!」と思ったそこのあなた。ストップです!
まだ受験勉強を始めてはいけません。始める前にあとひとつやらなければならないことがあります。それは「受験勉強の時間配分を決める」ということです。
目標点数を細かく決めたことによって、どの科目でどのくらいの勉強時間が必要かがわかりました。
当然、目標点数が高い科目ほど普段の勉強時間をたくさん確保するべきです。逆に目標点数が低い科目は勉強時間を抑えるべきです。
では具体的にどのくらいの時間配分で勉強すれば良いのでしょうか?ここでポイントとなる考え方は「目標点数の比=勉強時間の比」というものです。
これはどういうことでしょうか?先ほどの早稲田大学文学部の一般入試の目標点数を例に考えてみましょう。
目標点数から勉強時間の比が(英語:6 国語:5 社会:3)になりました。例えば、休日に8時間勉強するとしましょう。このような時は、(英語3時間30分 国語3時間 社会1時間30分)が良いです。
この時間配分によって、配点が高く目標点数も高い英語と国語の勉強時間がしっかり取れますし、配点が低く暗記科目である社会は短時間で効率的に勉強できるようになりました。
しかし、きっちりと比率通りに時間を組む必要はありません。
あくまでも目安なので「英語の比率は高いから多めに勉強しよう」「国語は英語くらいの時間を取るけど英語より少し少なめにしよう」「社会はだいたい英語の半分くらいの勉強量にしよう」くらいの感覚で大丈夫です。
目標点数を変える時は模試の後だけ
「計算したらこんなに目標点数が高くなっちゃったけど大丈夫かな?」と不安になっている方もいるかもしれません。
そこで「まだまだ実力がないから目標点数下げちゃおうかな…」と考えてはいけません。なぜなら、目標点数は「模試の結果を見てからでないと変えてはいけない」からです。
多くの受験生は「なんとなく自信がないから」「多分無理だから」という理由で目標点数を下げてしまいます。最悪の場合は、志望校まで下げてしまいます。
「なんとなく」は一番いけません。受験では根拠のない「なんとなく」は通用しないのです。
目標点数を「合計点→各科目」で考えたように、目標設定の意義は「要素分解しているところ」です。
そこで、「なんとなく」や「多分」のような感情で変更してしまうと目標設定の意味が全く無くなります。
だからこそ目標点数は模試の結果である「具体的な数値」を見て根拠を持ちながら変更しましょう。
なので今は、次に開催される模試まで先ほど掲げた目標点数と勉強時間で頑張ってみてください!
まとめ
この記事では、志望校分析が終わった後にやるべき「目標点数の決め方」をお伝えしてきました。
目標設定の仕方のポイントは2つありましたね。1つ目は「合格最低点から、全体の目標点数を決める」、2つ目は「全体の目標点数を、各科目の目標点数に要素分解する」でしたね。
面倒くさがってこの手間を省いて受験勉強をしてしまう受験生も多いでしょう。皆さんは他の受験生と差をつけるために、受験勉強を始める前にしっかりと目標点数の設定を行い、時間を有効活用していきましょう!
*記事に掲載中の学習塾STRUXプランは執筆時点でのものであり、一部変更となっている可能性がございます。詳しくは料金ページをご覧ください。