私立大学文系の試験は基本的に3科目です。そのため、科目数が多い国公立大学よりも勉強の負担が減ると考えている方もいるでしょう。
確かにそうかもしれませんが、それは他の私立大学文系受験者も全く同じ。ここで油断すると他の受験生に差をつけられてしまいかねません。
しかも私立大学文系の場合は英語と社会科目がメインであり、この2科目はいずれも国語とは異なり勉強したかどうかが顕著に結果に表れやすいです。
そのため、しっかりと自分がやるべき勉強を見極め「確実に解くためには何を勉強すべきなのか?」を明確にしておく必要があります。
そして、それを考えるためには「現状の自分の学力」を把握することが大切。
自分の現在地を知ることで志望校合格までに足りない部分が分かり、それを埋めるために適切な勉強に取り組めるのです。
それでは実際にどのような計画で勉強に取り組めば良いのでしょうか?
私立大学文系に向けた受験勉強で押さえるべきポイント
私立大学文系を目指す上で重要なポイントは以下の3つです。
私立大学文系受験のポイント1:英語で安定して高得点を獲得できるようにしよう!
大学受験において英語科目の受験を求められることは多く、その重要度は他の科目よりも上であることがほとんど。
実際、大学受験全般において英語科目の配点は高い傾向にあります。
特に私立文系に関しては、
- 英語と国語は必須
- 社会科目(世界史、日本史、地理等)から1科目選ぶ
というような組み合わせの合計3科目で受験することが多いです。
さらに、早稲田大学国際教養学部や上智大学といった私立大学文系の中には「他大学と比べて英語が難しい」と言われるものも多く、英語でどれだけ周囲に差をつけられるかが重要と言っても過言ではないでしょう。
こうした英語重視の動きは「英語4技能評価」などにも表れていますよね。
大学によってはTOEICなどの民間試験の結果を反映したり、2024年度から大学入学共通テストでも民間試験を導入する予定がある(2021年現在)など、これから受験に臨む上で英語の安定化というものは欠かせません。
私立大学文系受験のポイント2:社会科目は範囲が広いので必ず予習しておこう!
私立文系を受験するのであれば、上記のように分野の違いはあれどほぼ確実に社会科目を勉強する必要があります。
1科目を受験するだけで良い場合が基本ですが、私立文系の社会科目はかなり細かい部分の知識まで出題されることが多いです。
しかも範囲自体がかなり広く、学校の授業も試験直前期・高3の11月や12月まで続くことがほとんど。
そのため、授業外で予習をして教科書や参考書を読み込んでおかなければ試験に間に合いません。
「社会は暗記科目だから授業で覚えればいいや」と思っていると必要な知識が身につかないので注意しましょう。
私立大学文系受験のポイント3:社会科目では高得点を獲得できるようにしよう!
上記のように範囲が広く、その意味では勉強が大変な社会科目。
しかし内容自体はほぼ暗記メインです。そのため暗記した分だけ得点に繋げやすく、英語と比べると勉強は進めやすいとも言えます。
しかし、それは周囲も同じ条件です。暗記科目である社会は得点差をつけやすいのでみんながきちんと対策をしてくるでしょう。
特に私立大学文系は3科目しかないので、ここで得点差をつけられてしまうと他の複数教科で挽回するということがなかなか難しいです。
そのため社会科目では高得点を獲得できるようにしておきましょう。
私立大学文系に向けた勉強のための年間計画例
それでは私立大学文系合格に向けた年間勉強計画の例をご紹介しましょう。今回は「青山学院大学総合文化政策学部」に合格した方の英語の実例を基に、理想的な勉強計画について考えていきます。
高1の間は勉強習慣を身につけることを目標にしよう!
受験勉強の開始時期が遅いと挽回するのは大変ですが、早く始める分には全く問題ありません。
特に、高校3年生になってからいきなり受験生モードに入るのはなかなか難しいです。
今まで毎日部活漬けだったのにいきなり1日10時間勉強しようと決めても、途中で挫折しちゃいそうですよね。
そのため、英単語などの基礎事項を少しずつ始めることによって学習習慣だけでも身につけておくと良いでしょう。
今回の受験生の場合は、東進の教材を活用して早い段階から勉強をしていたので、英単語や英文法などの基礎事項はある程度身についています。
私立文系なので科目も多くないということもあり参考書をしっかり活用し始めたのは高3の6月からでしたが、それでも十分間に合いました。
通塾していなくても、「スタディサプリ」や「ターゲット1200」といった持っている単語帳などで「英単語」「英文法」は早めに完璧にしたいところです。
このように、本格的な勉強を始めるにあたり「勉強習慣があったかどうか?」は非常に重要な要素になると言えますね。
高2夏までに基礎をある程度固めておくとあとが楽!
本格的に受験生になるまでに基礎事項はなるべく終わらせておきたいところ。
高3の夏は本格的な演習問題に取り組むように、高2の夏は長期休みも含めて基礎をしっかり固めておきましょう。
今回の受験生の方が、自分に合う参考書を選んで本格的に勉強を始めたのが高3の6月。
そこまで早いわけではないですが、青山学院大学総合文化政策学部に必要な英文解釈の力は私立文系の中でもそこまで高難易度ではありません。
そのため、東進の教材のみでもかなり実力はついており受験に間に合いました。
しかし当然、要求される基礎レベルが上がればさらに早い時期から勉強を進めておく必要はあります。
もし自分の志望校がさらに難しい私立文系大学等である場合は、今回の例を参考にしつつ「最低でもいつ頃までに基礎を終わらせておくべきだろう?」と考えてみると良いでしょう。
高2秋も基礎を継続させよう!
この時期も基礎の継続が重要です。長期休みが終わると学校も始まり、人によっては忙しくて勉強を疎かにしてしまうこともあるでしょう。
しかし、せっかく長期休み等で身につけた知識を無駄にしてはいけません。頭から消えないようにしっかり勉強を継続しましょう。
高2冬は基礎を固めるラストチャンス!ここで差をつけよう!
この時期が終われば本格的に受験生となります。いよいよ演習問題等に時間を費やすことになり、なかなか基礎を振り返る時間は作れません。
そのため、この時期までには基礎をきちんと固めておきましょう。
特に私立文系の場合、英語はもちろんですが社会科目も細かい知識まで勉強しておく必要があります。
範囲も広く授業だけでは間に合わないことを考えると、英語と並行して力をいれなければなりません。
今回の受験生の方も、英語の基礎をある程度進めつつ社会科目の単語暗記にも力を入れていました。
さらに余裕を持った勉強をするためにも学年が変わる前に基礎はある程度終わらせておきましょう。
高3春からは今までの積み上げをフル活用しよう!社会の予習もスタート!
この時期からの勉強では築き上げた基礎事項が大切になります。
高3の夏からは長期休みも活用して演習問題にガンガン取り組んでいきたいので、知識を固めておくのはこの時期くらいまでを目安にすると良いでしょう。
特に英語の場合はそれが顕著。「英単語や英文法を固めて初めてメインの長文読解に取り組める」という科目であるため、勉強すべき分野がかなり広いです。
そのため学年が変わる前までには基礎事項を幅広く押さえておくことが必須と言えるでしょう。
社会に関してはGWまでには予習をスタートさせて夏前には完璧にしておくのがベストです。
また、私立大学文系の場合は3科目で試験をすることがほとんど。国公立大学であれば科目数も多いので、勉強も大変ですが他の科目で挽回できるチャンスはある程度ありました。
しかし私立大学文系は科目数が少ないので、1科目で失敗してしまうと他で挽回するのがなかなか難しいです。
特に社会科目もギリギリに始めてしまうと、隙間時間などもフルに活用しなければいけないためかなり負担が大きくなります。
今回の受験生の方も本格的に参考書を活用した勉強が夏からだったので、映像授業も活用しながらかなり詰め詰めのスケジュールとなりました。
本来夏以降は、演習に特化して実力を養成したい時期です。そのため時間を確保するためにも高3春のうちには基礎を固めておきましょう。
高3夏からは重要科目のメイン分野に取り組もう!
長文読解は英語科目のメインです。ほとんどの大学において、「英単語独自の知識を問う」というような問題はあまり出題されません。例えば、
- 早稲田大学政治経済学部→大問5題中3題が長文読解
- 慶應義塾大学総合政策学部→大問3題全てが長文読解
- 法政大学→大問4題中3題が長文読解
といったふうに、ほとんどの問題が長文読解という大学ばかりです。
他の私立大学文系でも、空所補充や短文英訳など「基礎知識を組み合わせて解く問題」ばかりが出題されます。
そのため、長期休みの間に問題演習に取り組むことで実践力を養わなければなりません。
この時期を過ぎると学校も始まりまとまった時間はほぼ取れないので、高3の夏はまさに受験の天王山と言えるでしょう。
また、私立大学文系では社会科目も高得点を獲得しておくことが必要です。
この時期に両方の科目で演習を繰り返せるように基礎事項はできる限り早めに終わらせておきましょう。
高3秋からは志望校ごとに必要に応じて分野の勉強を進めよう!
この時期になったら英作文やリスニングに取り組みましょう。この2分野に関しては、私立大学文系の中でも出題されるかどうかは個別で違います。
今回は出題範囲に入っているので取り組んでおきましょう。
とはいえメインは長文読解です。なるべくそちらに時間を割きたいので、英作文やリスニングは短期間で効率良く学習することを意識しましょう。
今回の受験生の方は秋過ぎまで英文法の仕上げに取り組んでいました。
元々勉強習慣がある上に隙間時間も活用できたため見事乗り切れましたが、なるべく基礎は早めに仕上げてしまって、この時期は「長文読解+その他の2分野」の演習に注力できると良いでしょう。
高3直前は過去問演習で試験本番までに実力を補強しよう!
これまでの知識の総仕上げです。過去問を活用して志望校合格に必要な実力を完成させましょう。
過去問に取り組むときは、試験本番と同じ時間配分で部屋の環境も整えてから行なってください。
「しっかり勉強したから大丈夫!」と思っても、試験本番で少なからず緊張してしまう可能性はあります。
また、いざ練習で解いてみたら「思ったよりも時間が足りなかった」ということがあるかもしれません。
これが本番だったらどうでしょうか?本番で失敗しても取り返しはできません。それよりも、練習段階で何回も失敗して自分にとってベストな条件を見つけておく方が絶対に良いです。
そして、練習でまだ不安な部分があればそこを重点的に復習するなどして最後の最後まで苦手を潰していけば、本番では100%の力が発揮できることでしょう。
まとめ
私立大学文系受験は科目数が少ないです。しかし、英語と社会という勉強結果が顕著に表れやすい科目が大半を占めているため、丁寧に勉強する必要があります。
また、英語の場合はメインの長文読解に取り組むよりも先に英単語や英文法といった基礎を固めなければなりませんし、社会科目も範囲がかなり広く自学自習は必須。
科目数が少ないからといって油断することは全くできないのです。
今回の方のように元々勉強習慣があれば挽回することは可能ですが、全員がそうではありません。
そのため、なるべく前倒しで基礎を固められるように少しずつ勉強していきましょう。